大竹先生より、宮本武蔵の一文を教えて頂きました。
先生、ありがとうございます。
太刀の道と云ふ事
太刀の道を知ると云は、常に我差す刀を指二つにて振るときも、道筋よく知りては自由にあるものなり。
太刀を早く振らんとするによって、太刀の道逆ふてありがた肱し。
太刀はふり能き程に静にふる心なり。
或は扇、或は小刀など使ふやうに、早く振らんと思ふ事によって、太刀の道ちかいてふりがたし。
其れは小刀きざみと伝ふて、太刀にては人の切れざるものなり。
太刀を打ち下げては、あげよき道へ上げ、横にふりては横にもどりよき道へもどし、如何にも大きに肱を延べて、強くふること、是太刀の道なり。
我が兵法の五つのおもてを遣ひ覚ゆれば、太刀の道定りて、振りよき所なり。
能々鍛練すべし。
現代語訳
太刀道を正しく、刀を振れるということは、自分の刀を右手の小指と薬指だけ絞めて握ったとしても、自在に振れるものだ。刀を早く振ろうとすると、太刀道が悪くなって振ることが出来ない。
刀は自分が振って丁度良い調子で慌てることなく、静かな心で振るのだ。
扇や小刀を使うように早く振ろうと思うと、太刀道は狂う。
これは小刀刻みと呼ばれている姿で、刀で人を斬る、など出来るレベルではない。
刀は打ち下げては、正しい道筋で上げ、横に切っても横に正しく戻し、大きな振り方で肘を伸ばし、強く振ることが重要だ。
二天一流の5つの表技を使い覚えれば、太刀道は定まり、正しく振れるのだ。
良く鍛錬せよ。
息を吸ったら静かに吐いて、指で引くな腕で引け
秋の落ち葉の散るごとく、闇夜に霜の降るごとく